経営手がかりシート・0616

(令和3年(2021年)9月版)

 

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0616経営戦略・ビジネスモデルの構築

 

●テーマ名(詳細版)

  経営戦略・ビジネスモデルの構築(利益の源泉の認識、技術力・競争力の源泉・知財の活用)

  脱下請けを目指すための事業形態の検討

  経営理念・ビジョン・ドメイン・全社戦略の明確化

  ありたい姿と現状の差異の検討

  経営課題の選定

  研究開発の成果物の活用法の事前検討

 

<<テーマの説明音声データ>>

 

テーマの説明

 このテーマは、自社の経営戦略・ビジネスモデルを構築することに関するものです。言い換えますと、自社が事業を行う際に、利益の源泉は何であると認識し、どのような道筋で利益を得るのか、ということを認識することに関するものです。

 

前段階としての現状(将来予測)の把握

 自社の経営戦略・ビジネスモデルを構築するためには、まず前段階として、現在及び今後における、自社を取り巻く環境を把握しておくことが重要です。自社を取り巻く環境を把握することには、自社が直接制御しきれない外部環境における、自社にとっての機会と脅威を把握すること、自社が直接制御できる内部環境における、自社の強みと弱みを把握すること、が含まれます。

 

現状(将来予測)を踏まえた検討

 自社を取り巻く環境を把握した上で、現在及び今後の自社の経営戦略・ビジネスモデルをどのようにするか検討します。例えば、内部環境において見いだした、自社の強み(競争力の源泉)を用いて、外部環境にどのように働きかけるか、または、自社の強み(競争力の源泉)をどのように育成していき、外部環境に適応していくか、などを検討します。

 

検討の切り口

 自社の経営戦略・ビジネスモデルの構築の検討には、様々な切り口が考えられます。

 例えば、従前の受注生産型から自主提案型への転換という発想から検討を始めることや、自社で内製する事業形態と他社との連携を行う事業形態を比較検討することや、自社の競争力の源泉・利益の源泉を再定義することから検討を始めることや、自社が参入する市場と投入する製品の組み合わせの最適化を目指すことなど、実に様々です。

 下記の事例では、自社の供給能力と社会の需要の関係に注目することや、KJ法等を用いて社員全員で知恵を絞るプロセスを取り入れることや、技術的に特許をとれないところをいかに守るかという発想を起点とすることや、知的財産の複数の獲得手法を組み合わせることを考慮することや、自社技術(特許)の実施権(ライセンス)を他社が受け入れやすい下地をいかに作るかという観点に立つことが示されています。

 

全社的な経営戦略から個別分野・運用へ

 自社の経営戦略・ビジネスモデルを十分に検討・認識しておくことは、個別分野の戦略や戦術の構築、企業活動の実際の運用、さらには、継続的に実施される現状分析のためには、重要です。

 例えば、自社の経営戦略・ビジネスモデルを明確にすることにより、経営戦略における、知的財産活動の位置付けや、知的財産活動に期待する効果(何を効果と捉えるか)を明確にすることができます。このような位置付け・期待する効果を明確にすれば、知的財産活動として何を行うのかどのような体制整備をすればよいのかが定まります。

 

検討の実施手法

 以上のような自社の経営戦略・ビジネスモデルの検討は、自社が自前で行うことも可能ですし、外部の専門家の助けを借りて行うことも可能です。自社の置かれた状況次第で選択することになります。

 自社が自前で行う場合には、下記の事例や参考情報に示されている手法を参考にすることができます。

 外部の専門家の助けを借りて行う場合には、公的機関の各種支援窓口に頼ることもできますし、中小企業診断士などの企業診断(経営診断)の専門家の助けを借りることもできます。

 

参考テーマ

 

0101012101310136015106561601…自社をとりまく現状分析全般

 自社の経営戦略・ビジネスモデル(事業において利益をどのように得るかなど)を検討する前提として、自社をとりまく現状を把握したい場合。

 

0616…提携

 経営戦略・ビジネスモデルの構築の一環として、他社との提携を行うことを検討する場合。

 

0631…M&A(企業買収)

 経営戦略・ビジネスモデルの構築の一環として、他社を買収することを検討する場合。

 

636…OEM(納入先商標による受託製造)

 経営戦略・ビジネスモデルの構築の一環として、他社のブランドの製品を受託製造することを検討する場合。

 

0641…ファブレス化(製造を分離)

 経営戦略・ビジネスモデルの構築の一環として、自社は研究開発を行い、研究開発の結果としての製品の製造は他社に委託するか、他社にライセンス供与することを検討する場合。

 

0651…参入市場の選定

 経営戦略・ビジネスモデルの構築の一環として、事業を行う市場の選択を検討する場合。

 

0656…プロダクトミックス・製品開発計画・プロダクトライフサイクルの検討

 経営戦略・ビジネスモデルの構築の一環として、自社の製品のラインナップ(ポートフォリオ)や製品開発計画を検討する場合。

 

0666…価値分析(VE分析)に応じた研究開発

 経営戦略・ビジネスモデルの構築の一環として、市場の需要に応じた、コストと機能の組み合わせを最適化する研究開発を検討する場合。

 

0671…製品特性に応じた販路選択(販売委託を含む)

 経営戦略・ビジネスモデルの構築の一環として、製品の特性に応じた販路を選択することを検討する場合。

 

51011646…知財(特許)に関する活動の位置付け・期待する波及効果の検討

 経営戦略・ビジネスモデルの構築の一環として、知的財産及び知的財産に関する活動を、経営上にどのように位置付けるか・どのような波及効果を期待するかを検討する場合。

 

1606…自社ブランドの形成

 経営戦略・ビジネスモデルの構築の一環として、自社ブランド(例えば、商標による。)の形成を検討する場合。

 

1611…オープンクローズ戦略の検討

 経営戦略・ビジネスモデルの構築の一環として、自社の強みに関する部分は他社に利用させず(クローズにして)、それ以外の部分については他社に利用させて(オープンにして)市場拡大を目指す戦略を検討する場合。

 

1661…特許法上の発明該当性に関する検討

 経営戦略・ビジネスモデルの構築の一環として、技術以外のもの(例えば、ビジネスモデルそのもの)に依拠する自社の強み(競争力の源泉)について、特許を取得することを検討する場合。

 

1666…特許出願する対象の技術を絞る検討

 経営戦略・ビジネスモデルを構築した結果として、経営戦略・ビジネスモデル上、重要な部分についてのみ特許出願等を行うことにより、効率的な知的財産活動を行うことを検討する場合。

 

●事例

 

・ココがポイント! 知財戦略コンサルティング 〜中小企業経営に役立つ10の視点〜

2009年3月 特許庁

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1247689

pp.23-32

株式会社シード

自社の供給能力だけでは社会の需要に対応することができない状況だと、模倣品を生む要因にもなる。そのため、他社にライセンスするという判断も必要になることもある

自社で供給できない部分は他社に譲り、ライセンス収入を得ることによって、次の開発に取り組むという割り切りが必要なこともある。」

 

・ココがポイント! 知財戦略コンサルティング 〜中小企業経営に役立つ10の視点〜

2009年3月 特許庁

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1247689

pp.41-49

株式会社エルム

「特許の対象となる製品のビジネスモデルは、開発に着手する時点からある程度描いた

特許戦略もビジネスモデルに基づいて考えている

特許を取るべきところと、取っても意味がないところなど、全体のフレームワークは、ある程度最初にできている。

例えば、機械や装置を売るのではなく、消耗品を販売するビジネスのほうが自社の収益を支える基盤となると考えた。そのため、特許による保護も、消耗品について注力した

他の装置に応用できる可能性のあるシステムも権利化している。

開発型の中小企業は、ビジネスモデルがしっかりできていないと生き残れない、と言及。」

 

・ココがポイント! 知財戦略コンサルティング 〜中小企業経営に役立つ10の視点〜

2009年3月 特許庁

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1247689

pp.59-68

株式会社ナベル

「蛇腹の適用対象をカメラから医療機器に展開するときに、蛇腹のドメイン(戦略領域)を再考した。そこで考えたのが「必要なときに伸びて、必要なときに縮むカバー」という概念である。そして、蛇腹へのニーズをいち早くキャッチして、要求されるレベル・新しい技術や工夫の余地を、素材と製法の両面で検討し、提案していくというスタイルを構築した。」

 

・ココがポイント! 知財戦略コンサルティング 〜中小企業経営に役立つ10の視点〜

2009年3月 特許庁

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1247689

pp.69-76

しのはらプレスサービス株式会社

千葉県中小企業知的財産戦略支援事業を活用した。

バランススコアカードを使って、業務面・教育面を整理し、戦略マップを作成した。

支援を受けて良かったことは、策定した計画の進捗状況を、外部からモニタリング・コントロールされることである。中小企業に足りないところは、計画力と計画の継続力である。

自ら計画を立てて、事業を戦略的に実行することが大切である。

難しいところは、計画自体を生み出すところと、社員全員に参画してもらうための知恵を絞るところ(例えば、KJ法の活用)である。」

 

・ココがポイント! 知財戦略コンサルティング 〜中小企業経営に役立つ10の視点〜

2009年3月 特許庁

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1247689

pp.93-99

鍋屋バイテック株式会社

技術的に特許がとれないところをどのように守るべきか戦略として検討している。中部経済産業局の「地域における知財戦略支援人材の育成事業」により、知財アドバイザーの派遣を受けて、その対策を検討している。」

 

・中小・ベンチャー企業知的財産戦略マニュアル2006

中小機構

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1247703

pp.26-27

ふくはうちテクノロジー株式会社

地域中小企業知的財産戦略支援事業におけるモデル支援事業(2004年度(平成16年度))。

特許調査・分析の結果をもとに、応用範囲の広いコア技術について重点的に投資すべき事業分野の絞り込みを実施した。」

 

・中小・ベンチャー企業知的財産戦略マニュアル2006

中小機構

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1247703

pp.40-47

クラスターテクノロジー株式会社

地域中小企業知的財産戦略支援事業におけるモデル支援事業(2006年度(平成18年度))。

ニーズ調査により抽出した自社技術を適用する用途の候補について、(1)特許的な観点での点数(障害となる他社権利が存在するか、自社技術以外の代替技術と比べたときの自社技術の優位性の有無などによる。)、(2)市場的な観点での点数(市場の構造と、市場規模による。また、自社技術がトレンドにあっているか競合の有無参入の容易性も考慮する。)をつけて、取り組み優先順位を付けた。

その上で、用途別に、知的財産の獲得戦略として、「先行特許の買い取り」「自社開発」「共同開発」のいずれの手法をとるかを検討した。」

 

・中小・ベンチャー企業知的財産戦略マニュアル2006

中小機構

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1247703

pp.114-121

株式会社東亜電化

地域中小企業知的財産戦略支援事業におけるモデル支援事業(2004年度(平成16年度))。

「新規技術開発の一環として地元大学と共同研究をしてきた。そこで得られた成果による有望な技術に対して、共同研究開発等の申し入れが内外の大手企業から寄せられた。その際に、他企業へのライセンシングと自社展開との線引きノウハウなどを含めた技術の囲い込み等に検討すべきことを抱えていた。

自社の特許の価値評価・パテントマップの作成を介して、特許を活用可能な産業分野の検討及び活用可能な候補先企業のリストアップ・リスク見積もりを行い、特許の具体的な活用分野・用途の検討を行った。

そのうえで、自社に貢献する知的財産戦略を目指して、4項目について機能強化目標を設定したロードマップを作成した。その4項目とは、「事業及び研究開発戦略(事業戦略及び研究開発戦略に知的財産戦略を組み込むこと)」「戦略的取得体制」「管理・活用体制」「他社対応体制(他社の知的財産により事業が制約を受けないこと)」である。」

 

・中小企業支援知的財産経営プランニングブック

平成23年3月 特許庁

https://www.jpo.go.jp/resources/report/chiiki-chusho/chizai_planning.html

https://www.jpo.go.jp/resources/report/chiiki-chusho/document/chizai_planning/all.pdf

p.67

株式会社エクセル電子

「競争の激化に伴い、自社にしかできない製品を開発し、積極的に提案することが求められるようになった。製品開発のためには先行投資が必要になるが、模倣品への対策をとらないと投資の回収が困難になるため、知的財産権を確保しておかなければならない。」

 

・中小企業支援知的財産経営プランニングブック

平成23年3月 特許庁

https://www.jpo.go.jp/resources/report/chiiki-chusho/chizai_planning.html

https://www.jpo.go.jp/resources/report/chiiki-chusho/document/chizai_planning/all.pdf

p.69

株式会社不二機販

「もともとは株式会社不二製作所が製造する装置の販社として設立された。競合他社との価格競争が激しく、付加価値の低い販社という事業モデルに限界を感じていた

そこで、装置の新たな用途開発に取り組み、独自の技術(処理技術)を確立するに至った。これらの技術を特許権等で保護し、受託加工や技術ライセンスなど知的財産を活かした付加価値の高いビジネスに結び付けている。

知的財産活動の目的を、自社技術の囲い込みではなく、利用促進に置いている。

相手方の状況に応じて、受託加工・技術ライセンスのいずれにも対応している。その結果、自社技術は、大手から中小まで幅広い事業者に利用されるに至っている。多くの事業者の利用を促進することによって、自社技術の認知度の向上、ブランド化を図ることが、相手方がライセンス等を受け入れやすい下地となっていると考えられる。」

 

・中小企業支援知的財産経営プランニングブック

平成23年3月 特許庁

https://www.jpo.go.jp/resources/report/chiiki-chusho/chizai_planning.html

https://www.jpo.go.jp/resources/report/chiiki-chusho/document/chizai_planning/all.pdf

p.70

株式会社善管

比較的差異化が難しい清掃業界での起業にあたり、他社では困難な特殊な清掃サービスを提供することを目指した。そして、清掃機材の開発に取り組んだ。そして、(清掃機材を用いた)清掃方法、清掃機材に関する特許出願に取り組んでいる。

独自手法が他社の目にとまって、特許ライセンスという形態の新たな事業提携に結びついた。」

 

●参考情報

 

経営デザインシート

内閣府知的財産戦略推進事務局

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keiei_design/index.html

現在と今後の自社を取り巻く環境を把握し、

経営課題などを明確にするために

一枚のシートで検討しようとするものです。

 

・「中小企業のためのデザイン経営ハンドブック

https://www.jpo.go.jp/introduction/soshiki/design_keiei/chusho.html

 

・アレックス、オスターワルダー他,

ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書」,翔泳社

(ビジネスモデルキャンバス)

https://www.amazon.co.jp/ビジネスモデル・ジェネレーション-ビジネスモデル設計書-アレックス・オスターワルダー-ebook/dp/B0088L95XG/

 

知的財産の価値評価について

2017年 特許庁、発明協会アジア太平洋工業所有権センター 

https://www.jpo.go.jp/news/kokusai/developing/training/textbook/document/index/Valuation_of_Intellectual_Property_JP.pdf

 

弁理士による知的財産価値評価パンフレット 特許編

2013年12月 弁理士会知的財産価値評価推進センター 

https://www.jpaa.or.jp/cms/wp-content/uploads/2017/03/patent20150826.pdf

 

中小企業支援知的財産経営プランニングブック

平成23年3月 特許庁

https://www.jpo.go.jp/resources/report/chiiki-chusho/chizai_planning.html

https://www.jpo.go.jp/resources/report/chiiki-chusho/document/chizai_planning/all.pdf

主として、支援者向けのコンテンツです。

中小企業に対して

知的財産戦略を含む支援を行う一連の流れ

示されています。

しかしながら、

企業内で自ら経営課題を検討する際にも

この資料が提示する手法は参考になります

 

p.27

「事業モデルは企業によって千差万別だが、ほとんどの技術系企業は事業モデルをバックボーンに知的財産活動を構築している。」

ファブレス型の研究開発企業のように、知的財産で開発商品の価値を強固にする事業モデル

「知的財産とは直接関係しない商品優位性が事業環境の変化によって保持できなくなり、知的財産で新たな優位性を構築した事業モデル

自社のノウハウ蓄積で成り立っていた事業から他社との共同開発事業へ移行し、自社の技術資産の権利範囲を保持するために知的財産活動に取り組む例」

自社の商品特性商品ライフサイクル競合環境マーケットシェア顧客特性など、市場環境を踏まえて、市場ポジションを考察する。事業モデルにおいて経営課題は何か、知的財産活動の経営戦略上の目的・位置付け知的財産活動を実践する仕組みはどうするかという仮説を立ててみる。この際に、自社と競合の特許出願の登録・出願状況(特許マップ)を作成してみることも効果的である。」

 

 

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