経営手がかりシート・0101
(令和3年(2021年)9月版)
0101自社の環境の認識(現在・今後)
●テーマ名(詳細版)
自社の環境(マクロ外部・ミクロ外部・内部)の認識(現在・今後)
自社の競争力の源泉(現在・今後)の洗い出し・明確化
外部環境分析全般
内部環境分析全般
市場(商圏)分析(市場規模調査・ニーズ調査)
業界分析(マクロ)
<<テーマの説明音声データ>>
●テーマの説明
このテーマは、現在及び今後の経営戦略を検討する際の基盤となる、現状分析を行うこと(自社を取り巻く環境を分析・把握すること)に関するものです。自社を取り巻く環境を理解してこそ、現在及び今後の経営上の課題を設定することや、自社の経営戦略・ビジネスモデルの選定を行うことができます。
自社を取り巻く環境には、大きく分けて、外部環境と内部環境があります。
・外部環境
外部環境は、自社が直接制御しきれないことを意味します。外部環境は、自社にとっての機会を提供することもありますし、脅威となることもあります。ただし、あることが機会であるのか脅威であるのかは、必ずしも固定的なものではないです。
外部環境は、自社との近さにより、マクロ・セミマクロ・ミクロといった区分を行うことがあります。また、外部環境として、様々な具体的な分野があります。そのような分野のひとつとして、知的財産分野があります。
マクロ外部環境は、社会・業界・市場の状況といったものです。セミマクロ外部環境には、自社に直接的に影響を与える者の状況(例えば、競合や取引先である特定の企業の状況)が含まれます。ミクロ外部環境には、自社に直接的に影響を与える者の特定の行動の状況(例えば、競合や取引先である特定の企業の特定の行動の状況)が含まれます。
・内部環境
内部環境は、自社が直接制御できることを意味します。内部環境には、自社の強みや弱みを示すものがあります。ただし、あることが強みであるのか弱みであるのかは、必ずしも固定的なものではないです。
内部環境は、自社の資源をヒト・モノ・カネ・情報の各側面でみるといった古典的な切り口のみならず、様々な切り口で検討することができます。そのような切り口として、自社の(技術・経営戦略(ビジネスモデル)・知的財産上の)強みを棚卸し(洗い出し、明確化)することがあります。
・外部環境と内部環境にまたがるもの
詳しくは別のテーマで解説していますが、自社と他社の知的財産(例えば、特許)のラインナップをマップ(特許マップ)上に表現することは、外部環境と内部環境の両方を検討したものであるといえます。製品(プロダクト)についても、同様のマップを検討できます。
・現状分析を行う方法
自社を取り巻く環境を分析・把握することは、自社が自前で行うことも可能ですし、外部の専門家の助けを借りて行うことも可能です。自社の置かれた状況次第で選択することになります。
自社が自前で行う場合には、下記の事例や参考情報を参考にすることができます。
外部の専門家の助けを借りて行う場合には、公的機関の各種支援窓口に頼ることもできますし、中小企業診断士などの企業診断・経営診断の専門家の助けを借りることもできます。
・環境を把握した後に行うこと
以上のような自社を取り巻く環境を分析・把握することにより、(次の段階における検討内容である、)経営戦略・戦術の検討を行うことができます。例えば、内部環境において見いだした、自社の強み(競争力の源泉)を用いて、外部環境にどのように働きかけるか、または、自社の強み(競争力の源泉)をどのように育成していき、外部環境に適応していくか、などです。
●参考テーマ
・0121…外国関連
自社の事業に外国が関係する場合。
・0131…競合他社分析
特定の競合他社との差異を比較検討したい場合。
・0136…技術分析・技術動向調査(特に特許以外)
社会・市場・業界の動向を分析する(外部分析する)際において、特に技術の動向を把握したい場合。
業界・他社の知的財産の動向を把握したい場合。
自社の製品・特許・商標の現状を把握したい場合。
・0616…経営戦略・ビジネスモデルの構築
自社をとりまく状況(外部環境・内部環境)を把握し、自社の強み(競争力の源泉)を明確化した後で、それらの情報を踏まえて、自社の経営戦略・ビジネスモデル(事業により利益を如何に得るかなど)を検討したい場合。
●事例
・中小・ベンチャー企業知的財産戦略マニュアル2006
中小機構
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1247703
pp.26-27
ふくはうちテクノロジー株式会社
地域中小企業知的財産戦略支援事業におけるモデル支援事業(2004年度(平成16年度))。
「現状分析において、営業秘密管理体制の未整備、開発案件を多数抱えることに起因する知的財産活動の分散、共同研究における契約関係の複雑化等の課題を把握した。その後、自社のコア技術に関する特許調査・分析・パテントマップの作成を実施、他社特許との比較により自社技術の競争力を分析した。また契約関係の精査を実施した。」
・中小・ベンチャー企業知的財産戦略マニュアル2006
中小機構
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1247703
pp.27-28, 107-113
大丸産業株式会社
地域中小企業知的財産戦略支援事業におけるモデル支援事業(2004年度(平成16年度))。
「大企業から知財(特許・製造ノウハウ等)・人材・商標などを譲り受けて事業を行っている。
権利の譲渡元の大手化学メーカーとの契約の精査及び特許調査を実施し、譲渡を受けた基本特許の権利範囲が、自社の現在または今後の事業分野をカバーするものとなっているか、他社の参入を阻止できる内容になっているか、譲渡元との契約が今後の事業展開に制約を加える内容のものとなっていないかの検証を行った。
マーケティング戦略を考えるにあたり、まず、譲渡元の大企業における研究開発時代における、成功・失敗の履歴、引き合いと受注の状況、反応のいい業種、悪い業種、どのような訴求点に反応したか、などを整理した。その上で今後ターゲットにすべき候補業界を選定した。
譲渡元、共同出願企業、大手顧客などとの権利や契約を精査し、強みや弱みを把握した上で、マーケティングをさらに具体化させている。
当支援事業と、中小企業基盤整備機構の専門家継続派遣・OB人材派遣制度の支援が相乗効果を発揮して新規顧客開拓などに貢献した。」
・中小・ベンチャー企業知的財産戦略マニュアル2006
中小機構
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1247703
pp.40-47
クラスターテクノロジー株式会社
「地域中小企業知的財産戦略支援事業におけるモデル支援事業(2006年度(平成18年度))。
自社の有する要素技術ごとに特許調査(先行する類似出願の有無の調査)を行い、自社技術の独自性・優位性を評価した。その結果、課題の斬新さのため、類似の出願がほとんど見当たらないことに加えて、材料特性の特許により、階層構造的に特許網が固められていることを確認した。
ニーズの調査を、(1)ニーズ調査アプローチ(公開資料を調査することで、自社技術の用途となりうるものを探すアプローチ。自社技術を用いた製品を購入する顧客となりうる企業がどのような用途を想定しているかを調査した。また、自社が志向する特定の分野について、特定のキーワードでの調査も行った。)、(2)ニーズ発想アプローチ(知財ブルーオーシャン戦略。現製品・現技術からみた場合には実現困難であるが、「できれば売れる」という製品イメージを想定し、その製品・機能を達成するためにはどのような要素技術が必要かを逆に考え、特許網(ポートフォリオ)の構成に落とし込むアプローチ。ブレーンストーミング・マインドマップを利用した。)、(3)ニーズヒアリングアプローチ(現場のニーズを聞くアプローチ)の3つを用いて行った。プロダクトアウトではなくマーケットインを重視した。」
・中小・ベンチャー企業知的財産戦略マニュアル2006
中小機構
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1247703
pp.48-57
株式会社糖質科学研究所
地域中小企業知的財産戦略支援事業におけるモデル支援事業(2006年度(平成18年度))。
「医療品の市場性を検証するために、国内外の製薬会社の治験情報を収集分析して、治験情報リストを作成した。
医療品の特許マップを作成し、関連医療品やその他関連製品への適用可能性の検証を行った。このような事業展開の裾野を広げる市場調査アプローチは必要である。特に、用途発明の活用については、特許マップ分析が効果的である。」
・中小・ベンチャー企業知的財産戦略マニュアル2006
中小機構
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1247703
pp.65-72
株式会社アクロス
地域中小企業知的財産戦略支援事業におけるモデル支援事業(2005年度(平成17年度))。
「特許調査の情報により自社が今後参入可能であると考えられる製品アイテムを(現在自社が参入済みの製品アイテムを含めて)リストアップした。それらについて市場調査(市場動向、規模、予測)を行った。これらは広く自社ビジネスの展開可能性を検討するために行った。
リストアップした製品アイテムそれぞれについて、技術的価値や完成度、参入容易度などを検討し、技術的評価点、市場的評価点という指標を用い、参入優先順位を点数評価した。
これらのすべての情報(出願と秘匿の切り分けや、「基本発明」「機能発明」「用途発明」の分類も含む。)を統合した特許マップによって、市場的観点、自社の保有技術の優位性から考えた場合に、どの市場から参入すべきかが一目瞭然であるようにした。
技術と市場のマトリックス上で、製品アイテムごとの戦略(例えば、自己実施・重点開発・ライセンス・資金調達(SPV移転)・ペンディング)を色分けしている。」
・中小企業支援知的財産経営プランニングブック
平成23年3月 特許庁
https://www.jpo.go.jp/resources/report/chiiki-chusho/chizai_planning.html
https://www.jpo.go.jp/resources/report/chiiki-chusho/document/chizai_planning/all.pdf
pp.60-61
ショーワグローブ株式会社
「以前は、必ずしも特許に頼らなくても品質やサービスの違いで競争優位を維持できることが少なくなかった。ところが近年は、顧客に新製品を納品した数週間後には類似品が持ち込まれる例もある。このように、海外の競合他社がキャッチアップしてくる期間が短縮し(アジアのメーカーの開発力が向上し)、新製品への投資を回収するのに十分な期間にわたり、自社の優位性を維持することが難しくなっている。こうした状況に対処するために、開発部門への知的財産担当者の配置、出願の促進など、知的財産活動により力を入れている。」
・中小企業支援知的財産経営プランニングブック
平成23年3月 特許庁
https://www.jpo.go.jp/resources/report/chiiki-chusho/chizai_planning.html
https://www.jpo.go.jp/resources/report/chiiki-chusho/document/chizai_planning/all.pdf
p.68
株式会社オークマ
「受注型で業務を継続することの弊害(価格要求)に直面した。
そのため、自主開発企業への脱皮、価格競争に巻き込まれない事業戦略、新規事業の参入を目指した。
知的財産情報に基づく技術課題の探索を行い、自社の従来事業(建具)における独自商品の開発、及び、知的財産による他社排除を行うようになった。
加えて、知的財産情報から、新規事業の探索を行うようになった。
事業テーマを仮決定すると、知的財産情報を分析して、自社が参入できそうな技術課題を探すことを、実開発に先んじて行うようになった。」
●参考情報
・経営デザインシート
内閣府知的財産戦略推進事務局
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keiei_design/index.html
現在と今後の自社を取り巻く環境を把握し、
経営課題などを明確にするために
一枚のシートで検討しようとするものです。
・ローカルベンチマーク
経済産業省
https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/sangyokinyu/locaben/
・川喜多二郎,「発想法 改版 創造性開発のために」中公新書(KJ法)
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B07PMC128C/
・川喜田二郎,「続・発想法 KJ法の展開と応用」中公新書(KJ法)
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B00LMB0FLK/
・中小企業活力向上チェックシート(2021年版)
https://www.keieiryoku.jp/category/files/checksheet.pdf
・企業経営の未病CHECKシート
神奈川県産業労働局中小企業部中小企業支援課
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/jf2/mibyo/documents/checksheet.html
・経営診断チェックシート 基礎診断用
https://www.j-smeca.jp/attach/kenkyu/honbu/h22/seizougyou_manual05.pdf
・支援マニュアル
(中小企業支援者向け)
中小機構
https://www.smrj.go.jp/tool/supporter/regional1/index.html
しかしながら、
企業内で自ら経営課題を検討する際に
参考になる検討手法が示されています。
「初期診断」のみならず、
「創業」「売上拡大」「新商品開発・販売」
「経営力・生産性向上」
「事業承継・知的資産」
といった個別の項目についても、
検討手法が示されています。
・初期診断の進め方
中小機構
https://www.smrj.go.jp/tool/supporter/regional1/frr94k0000000uzv-att/shiennavi25-8_H28.pdf
・知的財産の価値評価について
2017年 特許庁、発明協会アジア太平洋工業所有権センター
・乾智彦,”知的財産ローカルベンチマーク”,パテント,2020,Vol.73,No.9,pp.70-83
https://system.jpaa.or.jp/patent/viewPdf/3604
・中小企業支援知的財産経営プランニングブック
平成23年3月 特許庁
https://www.jpo.go.jp/resources/report/chiiki-chusho/chizai_planning.html
https://www.jpo.go.jp/resources/report/chiiki-chusho/document/chizai_planning/all.pdf
中小企業に対して
知的財産戦略を含む支援を行う一連の流れが
示されています。
しかしながら、
企業内で自ら経営課題を検討する際にも
この資料が提示する手法は参考になります。
p.27
「業界の基準指標は法人企業統計調査年報(財務省提供)で把握できる。業界基準と比較した収益力の分析に役立つ。」
・法人企業統計調査
財務省財務総合政策研究所
https://www.mof.go.jp/pri/reference/ssc/index.htm
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