経営手がかりシート・1671

(令和3年(2021年)9月版)

 

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1671出願かノウハウ秘匿かの選択判断

 

●テーマ名(詳細版)

  出願かノウハウ秘匿か(一般公開か)の選択判断

 

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テーマの説明

 このテーマは、自社の事業を行っていく上で、自社が有する(あるいは今後獲得する)技術やノウハウの内容を公開するか否かを制御できる場合において、当該技術やノウハウを特許出願するか(特許出願すると原則一年半経過後に出願公開されます。)秘匿するかを判断することに関するものです。(なお、自社の経営戦略次第では、一部の技術の内容を単に一般公開するということもありえます。)

 特許出願と秘匿のいずれを選択するかの判断に際しては、以下に示しますことに加えて、下記の事例や参考情報を参考にするとよいでしょう。

 

判断における考慮事項

 自社において特許出願と秘匿のいずれを選択するかの判断を行う際には、様々な点を考慮することになります。まずは、特許出願と秘匿のそれぞれの一般論的なメリットとデメリットを把握しておいたほうがよいです。そのような一般論に加えて、自社の経営戦略・ビジネスモデルをどのように構築するか(何を利益の源泉にするか)の認識や、経営戦略における、知的財産活動の位置付け・期待する効果(何を効果と捉えるか)の認識や、経営戦略における、個々の技術(あるいは、当該技術のための特許出願)の位置付け・目的・期待する効果や、自社が特許出願にかけられる費用(コスト)の大きさ(予算)を考慮することになります。

 

解析技術の進歩への配慮

 自社の事業を行っていく上で、必ずしも対外的に露見しない技術やノウハウは、特許出願せずに、原則的に秘匿するという選択を行うこともあるでしょう。

 ただし、解析技術の進歩により、昔は秘匿できたノウハウであっても、最新技術で解析されてしまうこともありえます。その場合は秘匿していたことによる効果は失われます。このようなリスク要因は配慮したほうがよいです。

 

後発他社による独自開発への対策

 技術やノウハウを特許出願せずに秘匿する選択をした場合には、自社における営業秘密管理に不備がなくても、他社が独自に同じ技術やノウハウを開発するに至ることもあり得ます。さらに、(自社は秘匿しているゆえ、当該技術やノウハウの特許法上の新規性等は失われていませんので、)他社が、独自開発した技術やノウハウについて特許出願し特許権を取得する可能性があります。その場合には、後発である他社が特許権を取得するという事態も生じ得ます。このことを考慮して、自社としては、(1)秘匿したいところではあるが敢えて特許出願するか、(2)秘匿しつつ、先使用権を証明するための証拠の確保を行う、といった対応が考えられます。

 

参考テーマ

 

0616…経営戦略・ビジネスモデルの構築

 出願か秘匿かの検討に際して、経営戦略・ビジネスモデルの検討を行う場合。

 

1646…特許出願の目的

 出願か秘匿かの検討に際して、出願するとした場合の目的の検討を行う場合。

 

51015601560651165131…経営戦略上の知財活動の位置付け・期待する波及効果の検討

 出願か秘匿かの検討に際して、知的財産に関する活動の位置付け・期待する波及効果を検討する場合。

 

1651…知財の取得・維持のためのコストの時系列見積もり、特許権を取得するコストと、特許権を取らないことによるリスクの比較検討

 出願か秘匿かの検討に際して、知財の取得・維持のためのコストと特許(知的財産)を取らないことによるリスクの比較検討を行う場合。

 

3126…先使用権確保のための証拠保全

 ノウハウ等の秘匿を選択する場合であって、他社によるノウハウ等の後発的な独自開発に備える場合。

 

●事例

 

・ココがポイント! 知財戦略コンサルティング 〜中小企業経営に役立つ10の視点〜

2009年3月 特許庁

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1247689

pp.33-40

田川産業株式会社

ノウハウ秘匿するものと特許にするものとの区別が難しいものは、弁理士に相談している。

シンプルなところを特許で抑えて、ノウハウと併せて二重の防御にしている。」

 

・ココがポイント! 知財戦略コンサルティング 〜中小企業経営に役立つ10の視点〜

2009年3月 特許庁

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1247689

pp.41-49

株式会社エルム

特許とノウハウの両面で他社の参入を阻むことができている。

重要な部品は物理的に分解できないように工夫するなど。」

 

・ココがポイント! 知財戦略コンサルティング 〜中小企業経営に役立つ10の視点〜

2009年3月 特許庁

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1247689

pp.93-99

鍋屋バイテック株式会社

知財が製品の形に表現されるもの権利行使ができるものは、特許を出願している。

製造技術は基本的に特許出願せず、ノウハウとして保持している。(例外あり)」

 

・中小・ベンチャー企業知的財産戦略マニュアル2006

中小機構

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1247703

pp.84-91

ナミックス株式会社

地域中小企業知的財産戦略支援事業におけるモデル支援事業(2005年度(平成17年度))。

「以前は、出願はせずノウハウによる保護を行う方針だった。しかし近年の分析技術の進展等により、ノウハウ秘匿による保護の効果が薄れてしまった。そのため、出願による権利化を進めていくべく方向転換を行った。」

 

・中小・ベンチャー企業知的財産戦略マニュアル2006

中小機構

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1247703

pp.121-127

アーベル・システムズ株式会社

地域中小企業知的財産戦略支援事業におけるモデル支援事業(2004年度(平成16年度))。

半導体の設計あるいは応用技術を収入源としてるファブレス指向の企業である。収入源としては、特許開示収入開発業務支援収入OEM供給事業収入がほぼ同額である。半導体の設計・応用技術とは別に、いくつかの要素技術も所有している。

他社にライセンスしない技術は、コア技術・自社実施技術として、完全なノウハウ温存・ブラックボックス化が望ましい。」

 

・中小企業支援知的財産経営プランニングブック

平成23年3月 特許庁

https://www.jpo.go.jp/resources/report/chiiki-chusho/chizai_planning.html

https://www.jpo.go.jp/resources/report/chiiki-chusho/document/chizai_planning/all.pdf

pp.68-69

ミツカワ株式会社

リバースエンジニアリングで分かってしまうものは極力権利化し、そうでないものはノウハウとして温存・蓄積(秘匿)するよう、権利化とノウハウの両輪で、知的財産活動を進めている。」

 

●参考情報

 

中小企業経営者のためのノウハウの戦略的管理マニュアル

 不正競争防止法による営業秘密の保護 及び 先使用権制度の活用について

https://www.tokyo-kosha.or.jp/chizai/manual/knowhow/knowhow_all.pdf

 

西川喜裕,”知的財産戦略における権利化と秘匿化の選択”

https://www.inpit.go.jp/content/100644635.pdf

 

鈴木英明、小田哲明,”ノウハウの保護戦略に関するフレームワーク”,2012-3,日本MOT学会

http://www.js-mot.org/journal/pdf/548_54.pdf

 

新井信昭,亀山秀雄,”「見える化」による発明、技術、ノウハウのリスクマネジメント”,Journal of the International Association of P2M, 2012, Vol.7, No.1, pp.31-48

https://www.jstage.jst.go.jp/article/iappmjour/7/1/7_KJ00008274675/_pdf/-char/ja

 

後藤時政,樋口武尚,井上博進,”わが国中小企業の知財マネジメント診断 特許出願における資金的および人的資源の状況について”,日本経営診断学会論集,201414, pp.27-33

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jmda/14/0/14_27/_pdf/-char/ja

 

高橋政治,「ノウハウ秘匿と特許出願の選択基準およびノウハウ管理法」,現代産業選書

 

●相談先

 

営業秘密・知財戦略相談窓口

工業所有権情報・研修館(INPIT

https://faq.inpit.go.jp/tradesecret/service/

https://www.inpit.go.jp/katsuyo/tradesecret/madoguchi.html

 

 

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