経営手がかりシート・5606

(令和3年(2021年)9月版)

 

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5606知財人材の確保育成・知財教育

 

●テーマ名(詳細版)

  知財を担う人材の確保・育成

  全社的な知財教育・啓蒙

  戦略・戦術の策定や知財の活動を通じた社内人材の育成・啓蒙

 

<<テーマの説明音声データ>>(知財系の資格の部分は除く)

 

テーマの説明

 このテーマは、自社の人材における知的財産に関する活動に対する能力を向上させることに関するものです。自社の経営戦略における、知的財産に関する活動の位置付け・知的財産に関する活動に期待する効果(何を効果と捉えるか)によって、自社内のどの範囲のひとにどの程度の知的財産に関する活動のための能力を身につけてほしいと考えるのかが定まるでしょう。

 

社内の認識の強化

 自社における知的財産を明確化すること(場合によっては権利化のための活動をすること)により、自社内(自社の従業員間)で、自社が有する強み(競争力の源泉)の認識(あるいは、今後獲得すべき強みの認識が確かなものになります。このことが、自社の経営戦略・ビジネスモデル(自社の事業において何を利益の源泉とするかの設計)の認識・改善につながります。また、自社をとりまく環境(現状と将来予測)の把握にもつながるでしょう。このような一連の取り組みにより、自社内の経営者や個々の従業員に、自社の知的財産に関する活動のための実践的な知識・認識が蓄積されていきます。

 

論理的客観的思考力の育成

 自社において、現状分析・研究開発・知的財産に関する活動(例えば、知的財産の権利化)などの一連の活動を行う際に、知的財産をはじめとする、自社の強み(競争力の源泉)を明文化・客観化する過程・訓練を経ることになります。このことによって、自社の事業を行って利益を確保するに至るまでの道筋に関する論理的な思考能力を、自社の経営者や個々の従業員が獲得することが出来ます。

 

育成手法

 以上で取り上げた例は、自社の日常の知的財産に関する活動において、主として、オンザジョブトレーニングOJTの形態で行われるものです。OJT以外にも、研修・勉強会を企画することもできます。

 

知財系の資格

 自社の人材における知的財産に関する活動のための能力を向上させるための分かりやすい方策として、知的財産に関わる資格を取得するか、資格に関連する知識を学ぶことも有効です。

 中小企業においては、手始めに、二級知的財産管理技能士になるための検定試験(知的財産管理技能検定)の知識を学ぶことが適切です。弁理士試験よりも知的財産管理技能検定のほうが、企業内で活かしやすい知識をより効率的に身につけることができます。また、ひとりひとりが知的財産管理技能検定の知識の全分野を身につけることまでは要さず、まずは、自らの業務に関連が深い分野から学ぶことも可能です。

 

参考テーマ

 

5101…知財活動の位置付け・波及効果の総論

 知的財産に関する活動の位置付け・波及効果に関する幅広い検討を行う場合。

 

●事例

 

・中小・ベンチャー企業知的財産戦略マニュアル2006

中小機構

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1247703

pp.28-29, 73-83

株式会社オプナス

地域中小企業知的財産戦略支援事業におけるモデル支援事業(2005年度(平成17年度))。

「「発明提案書の書き方講座」、「特許調査講座」などを開催した。このことにより、特許事務所に対して的確な出願依頼をしなければならないという意識を社内で共有した。

開発レビューに連動した「発明検討会」の開催により、特許出願する発明は、完成製品や完成図面だけできまるものではないことが、社内で理解されるようになった。」

 

・ココがポイント! 知財戦略コンサルティング 〜中小企業経営に役立つ10の視点〜

2009年3月 特許庁

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1247689

pp.59-68

株式会社ナベル

社員が新事業を提案してきたときに、従来製品に対する進歩性等はどこにあるのかを突き詰めさせ特許出願の対象となる発明の構成を自分で考えさせている。新しいことを考えた発明者自身が弁理士とやりとりをし、発明の構成を明確にしていくプロセスが重要である。自らの考えを、特許として認められるだけの文書に変えていく作業を通して「自己の客観化」が可能になる。「自己の客観化」は、組織を強固にするために必要なプロセスである。

特許を取得できたというのは結果であって、そこに至る綿密で論理的なプロセスが重要である。このプロセスを継続することにより信用がついてくる。その成果がやがてはキャッシュフローに代わってくる。

技術部門の担当者それぞれが社長や弁理士とコミュニケーションをとるという、多くの社員が参加する体制を敷いている。

技術部門だけでなく営業など他部門も含めて弁理士との勉強会を開いている。」

 

・ココがポイント! 知財戦略コンサルティング 〜中小企業経営に役立つ10の視点〜

2009年3月 特許庁

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1247689

pp.69-76

しのはらプレスサービス株式会社

知財活動を全社で一致して行うため、社員全員が合宿を行い、意識合わせを行った。」

 

・ココがポイント! 知財戦略コンサルティング 〜中小企業経営に役立つ10の視点〜

2009年3月 特許庁

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1247689

pp.77-84

株式会社昭和

特徴的な仕事をしたら何でも良いので文章化し、特許として権利化することを日常から心がけるようにと、社員に伝えている。」

 

・中小・ベンチャー企業知的財産戦略マニュアル2006

中小機構

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1247703

pp.30, 84-91

株式会社ナミックス

地域中小企業知的財産戦略支援事業におけるモデル支援事業(2005年度(平成17年度))。

階層別研修現場指導等により、知的財産管理能力アップを図った。

パテントマップのプレゼンテーションを技術者向けに行うことにより、技術者の知的財産マインドの向上を図った。

特許の一般知識の研修」「明細書作成実習」「特許検索実習」を行った。

従前は、先行技術調査が後回しにされるケースがほとんどであった。

先行技術調査を日常的に実施し、パテントマップ等を活用しながら、その中の注目公報をウォッチングし、開発した成果がどのような位置付けにあるかどのような権利になるか、また事業戦略にどのように活用出来るかという問題意識を持った取り組みの定着により、効率的かつリスクの低い研究開発活動が実施できるという認識が得られた。

マネージャー・リーダー階層に対しては、グループディスカッションの研修を行い、今後の自社の知的財産戦略推進の主導的な役割を果たしていく意識を促した。」

 

・中小・ベンチャー企業知的財産戦略マニュアル2006

中小機構

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1247703

pp.48-57

株式会社糖質科学研究所

地域中小企業知的財産戦略支援事業におけるモデル支援事業(2006年度(平成18年度))。

知的財産研修プログラムを実施した。研修は1日間の座学と実習を盛り込んだ基本的なもので、一般的な知財の実務知識と管理のポイントの習得と、商用データベースを使用した特許調査の実習を含む。」

 

・中小・ベンチャー企業知的財産戦略マニュアル2006

中小機構

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1247703

pp.58-63

フィーサ株式会社

地域中小企業知的財産戦略支援事業におけるモデル支援事業(2006年度(平成18年度))。

共同作業形態でパテントマップを作成することにより、経営陣及びR&D部署内で知財意識の啓発がなされ、現状の課題認識の明確化他社の動向の社内知識化(共同認識化)がなされた。」

 

・中小・ベンチャー企業知的財産戦略マニュアル2006

中小機構

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1247703

pp.65-72

株式会社アクロス

地域中小企業知的財産戦略支援事業におけるモデル支援事業(2005年度(平成17年度))。

「従前は「発明があるから特許を出す」という特許への取り組み方であったが、事前に出願すべき特許に関して調査・検討(特許の棚卸し・対象技術の調査など)を行うという変化が社内に生まれた。また、商標権・意匠権等を利用してブランド力を強化していく取り組みを本格化させた。」

 

・中小・ベンチャー企業知的財産戦略マニュアル2006

中小機構

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1247703

pp.29, 98-106

株式会社ハルナ

地域中小企業知的財産戦略支援事業におけるモデル支援事業(2004年度(平成16年度))。

「自社のビジネスモデル・技術内容を踏まえ、コア事業に関して特許調査・分析・特許マップの作成を行い、他社との技術の差別化度合いを測定した。そして、投資家に対する知財情報の情報開示に利用する「知的財産報告書」の作成を行った。

「知的財産報告書」の作成により、作成過程の中で、技術内容を分析し、事業・研究開発・知的財産の相互関連を整理検討することにも意味がある。この検討作業が、自社の事業戦略・開発戦略・知的財産戦略についての社内の意識共有、体制整備に貢献した。」

 

・中小・ベンチャー企業知的財産戦略マニュアル2006

中小機構

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1247703

pp.107-113

大丸産業株式会社

地域中小企業知的財産戦略支援事業におけるモデル支援事業(2004年度(平成16年度))。

「大企業から知財(特許・製造ノウハウ等)・人材・商標などを譲り受けて事業を行っている。

社内のメンバーが、事業戦略の共通認識を持つようになり、知的財産戦略の重要性を認識するようになった。

特許戦略の整理と基本スタンスの確定を踏まえて、譲渡された基本特許を強化するためのコンセプト特許出願特許を活用したマーケティング戦略を実行する意向である。

マーケティング戦略と知的財産戦略の方針を明確にし、新素材による成長を全社一丸となって目指している。」

 

・中小企業支援知的財産経営プランニングブック

平成23年3月 特許庁

https://www.jpo.go.jp/resources/report/chiiki-chusho/chizai_planning.html

https://www.jpo.go.jp/resources/report/chiiki-chusho/document/chizai_planning/all.pdf

p.56

オオクマ電子株式会社

知的財産(特許)を提案型企業への意識変革のツールとすることに取り組んでいる。統括する責任者が、技術開発、営業、知的財産の全てを網羅的に横断する提案活動及び業務管理を実践する。業務が知的財産活動につながっていない場合には、責任者が修正や確認を行っている。

開発を行う際には、特許出願できるレベルであるかを基準として、その独自性や他社と比した優位性確認している。特許出願の検討のなかで、類似技術との差異化が不十分の場合には開発レベルの修正まで言及する。営業を行う際にも、自社技術が知的財産で裏付けられているかを担当者自らが理解した上で営業活動に取り組むようにしている。

知的財産の法的な効力や権利としての活用以前に、知的財産に求められる新規性や客観性の考え方を、社員の意識改革に活用している。」

 

・中小企業支援知的財産経営プランニングブック

平成23年3月 特許庁

https://www.jpo.go.jp/resources/report/chiiki-chusho/chizai_planning.html

https://www.jpo.go.jp/resources/report/chiiki-chusho/document/chizai_planning/all.pdf

pp.56-57

株式会社オーティス

自社製品に関連する特許権・意匠権・商標権が一覧できるように図示された「特許マップ」を作成している。「特許マップ」は社内で知的財産業務の関係者以外にも配布され、自社製品の特徴となる要素が知的財産権という形で明示され、社内に周知される仕組みになっている。

「特許マップ」の利用によって、開発部門や営業部門を含めた社内全体で自社製品の特徴や強みを共有できるようになっている。それに加え、知的財産権を侵害している可能性のある他社製品を営業部門が発見してくるといった効果も生じている。

知的財産活動を通じて明らかになった自社の強みを社内で共有し、営業活動や侵害対応にも効果を生じさせている。」

 

・中小企業支援知的財産経営プランニングブック

平成23年3月 特許庁

https://www.jpo.go.jp/resources/report/chiiki-chusho/chizai_planning.html

https://www.jpo.go.jp/resources/report/chiiki-chusho/document/chizai_planning/all.pdf

p.78

精電舎電子工業株式会社

開発部門に限らず、経営者から事務・営業担当者まで全社員セミナーに参加するなど、正確な知的財産の理解に努めている。」

 

・中小企業支援知的財産経営プランニングブック

平成23年3月 特許庁

https://www.jpo.go.jp/resources/report/chiiki-chusho/chizai_planning.html

https://www.jpo.go.jp/resources/report/chiiki-chusho/document/chizai_planning/all.pdf

p.79

株式会社名南製作所

ほとんどの社員に開発部門を経験させる人事制度、知的財産を含む開発業務をテーマとした定期的な勉強会が、「(知的財産を含めた)開発重視」の価値観の共有に役立っている。」

 

・中小企業支援知的財産経営プランニングブック

平成23年3月 特許庁

https://www.jpo.go.jp/resources/report/chiiki-chusho/chizai_planning.html

https://www.jpo.go.jp/resources/report/chiiki-chusho/document/chizai_planning/all.pdf

p.82

株式会社ササキコーポレーション

改善提案・新規考案の評価制度年度末の表彰グループごとの改善活動など、社員の知的財産に対する認識を高める仕組みを実践している。社内の知的財産力向上が、自社ブランドで自己提案型事業を展開するために必要不可欠な経営要素と位置付けている。」

 

●参考情報

 

中小企業支援知的財産経営プランニングブック

平成23年3月 特許庁

https://www.jpo.go.jp/resources/report/chiiki-chusho/chizai_planning.html

https://www.jpo.go.jp/resources/report/chiiki-chusho/document/chizai_planning/all.pdf

主として、支援者向けのコンテンツです。

中小企業に対して

知的財産戦略を含む支援を行う一連の流れ

示されています。

しかしながら、

企業内で自ら経営課題を検討する際にも

この資料が提示する手法は参考になります

 

p.84

社内セミナーの例として、「知的財産権に関する社内意識を高める啓発セミナー」「知的財産活動を進めるためのスキル習得セミナー(例:発明提案書作成指導、先行特許調査手法の指導)」「営業秘密管理勉強会」が挙げられる。」

p.85

「教育・研修については、社外のセミナーを有効活用する手がある。」

 

 

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