経営手がかりシート・4116
(令和3年(2021年)9月版)
4116他社との契約における注意点
●テーマ名(詳細版)
他社との契約における注意点
秘密保持契約
共同研究開発契約
独占禁止法(優越的地位の濫用)・下請法を踏まえた注意点
自社の権利に関するライセンス契約
他社の権利を導入するライセンス契約・権利移転
<<テーマの説明音声データ>>
●テーマの説明
このテーマは、自社と他社が契約すること、より広くは、自社と他社が関わりを持つことに関するものです。自社と他社が関わりを持つ場面では、後になって思わぬ事態を招かないように注意が必要です。特に、契約を交わす場合は、契約の拘束力を認識して、より慎重になることが望まれます。
契約等に関しては、ひとつひとつの契約を丁寧に検討することと、自社が不利にならない契約となるように予め準備しておくこと(例えば、自社から契約書の様式を提示すること)が、重要です。下記の事例や参考情報を参照するとよいでしょう。例えば、下記の参考情報には、各種契約(秘密保持契約・共同研究開発契約・ライセンス契約・特許権譲渡契約を含む。)のひな形・文例が示されています。当該ひな形・文例を参考に、自社独自の契約書の様式を用意しておく手法もあります。
下記の事例では、他社との関わりの段階(フェーズ)ごとに必要になる契約を予め明確にしておくことにより、リスクの軽減を図っているようです。
契約等の妥当性については、自社における検討に加えて、外部の専門家(弁護士など)の助言や見解を得ることもできます。
・企業間の力関係に偏りがある場合
大企業である他社との関係では、力関係の偏りや、法律の知識の差を背景に、不利な取引や契約を強いられそうになる場面が想定されます。(特に、他社が定めた様式の契約書での契約を、当該他社が一方的に求めてくる場面は注意が必要です。)
その場合は特に、下記の参考情報に示される情報の検討や下記の相談先での相談、あるいは、外部の専門家(弁護士など)との相談、独占禁止法や下請法の知識・運用の確認などを最大限活用して、他社との適正な関係を築くようにしたいところです。
●参考テーマ
・0626、0631、0636、0641、1616、3101…提携・M&A・OEM・ファブレス・ライセンス・秘密保持
他社と契約する際に、契約そのもの以外にも考慮することがある場合。
●事例
・ココがポイント! 知財戦略コンサルティング 〜中小企業経営に役立つ10の視点〜
2009年3月 特許庁
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1247689
pp.33-40
田川産業株式会社
「共同研究において、大企業と共同出願するという手もあると聞いたことがある。
大企業は、模倣品等が出たときの対処方法等を知っているゆえ、大企業と利害を共通にすることで、発明(特許)を守ってもらうという発想。」
・ココがポイント! 知財戦略コンサルティング 〜中小企業経営に役立つ10の視点〜
2009年3月 特許庁
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1247689
pp.41-49
株式会社エルム
「パートナー等との契約書は、細かい文言までチェックする必要がある。
契約書にコピー製品の製造を認めるような条項が入っていたら、特許権を行使できなくなる。」
・ココがポイント! 知財戦略コンサルティング 〜中小企業経営に役立つ10の視点〜
2009年3月 特許庁
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1247689
pp.59-68
株式会社ナベル
「かつて、取引のあった素材メーカーに開発を依頼した製品を競合他社に横流しされてしまったことがある。
提案型の企業として、自社技術を横展開するため、顧客との守秘義務を厳格に守ることが前提となる。例えば、ある顧客が工場に来る際には、他の顧客の製品・図面等を全て、工場の外に出すなど、万全の配慮をしている。」
中小機構
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1247703
pp. 26-27, 128-137
ふくはうちテクノロジー株式会社
地域中小企業知的財産戦略支援事業におけるモデル支援事業(2004年度(平成16年度))。
「知的財産戦略の策定を実効性のあるものとして自社内に定着させるために、法務体制の整備(契約書ひな形作成等)を行った。
過去の契約によって自社がどのような制約を受けているのかを正確に把握しておく必要がある。契約環境を図や一覧表にまとめておくことが得策である。
ここでの制約とは、例えば、自社権利を他社にライセンスする際に、独占的実施権を設定した場合に、自社の営業活動範囲が制約されることである。したがって、独占的実施権を設定するときは、将来の事業展開を予測しながら慎重に行う必要がある。
つまり、ライセンス契約は「お金」と「活動の制約」の両方を配慮する必要がある。
社外との契約関係について、契約モデルを可視化した。他社との契約関係をフェーズ毎に分析することがビジネスリスクを軽減することにつながる。フェーズ毎に、必要となる契約の種類を明確にしておく。例えば、サンプルを提供するフェーズ(最初のフェーズ)では、秘密保持契約・情報開示契約を行う。試作装置納入のフェーズ(次のフェーズ)では、研究開発委託契約・共同研究開発契約・ノウハウ実施許諾契約など目的にあった契約を締結する。装置販売のフェーズ(最後のフェーズ)では、売買契約のみならず、特許ノウハウ実施許諾契約も行う。」
中小機構
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1247703
pp.107-113
大丸産業株式会社
地域中小企業知的財産戦略支援事業におけるモデル支援事業(2004年度(平成16年度))。
「大企業から知財(特許・製造ノウハウ等)・人材・商標などを譲り受けて事業を行っている。今後の事業を検討し直すにあたって、今一度、譲渡元の大企業との契約内容の確認を行った。
ただ一般には、大企業からの移転された技術は、その完成度、知的財産権の確保などの観点から考えた場合、リスク要因は比較的少ないと考えられる。
その一方で、技術を有する大企業の立場は強く、技術移転やライセンスに際して、中小企業側に不利な契約がなされるケースも多い点に注意が必要である。」
・中小・ベンチャー企業知的財産戦略マニュアル2006
中小機構
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1247703
pp.121-127
アーベル・システムズ株式会社
地域中小企業知的財産戦略支援事業におけるモデル支援事業(2004年度(平成16年度))。
「半導体の設計あるいは応用技術を収入源としてるファブレス指向の企業である。収入源としては、特許開示収入、開発業務支援収入、OEM供給事業収入がほぼ同額である。半導体の設計・応用技術とは別に、いくつかの要素技術も所有している。
(主としてノウハウについての)オプション契約の際には、将来の契約(本契約としてのライセンス契約)の道筋を考えたライセンス契約内容を明確にすることが重要である。このような契約に関しては、節目節目に専門家(弁理士や弁護士)に確認することが重要である。
非独占的通常実施権によるライセンス契約を推進する手法として、対象とする特許を公的機関に扱ってもらうことや、交渉経過・内容を透明化するために、特許流通アドバイザーなど、第三者を同席させることなども、実現性のあるものである。ライセンシーが大企業の場合でもライセンス契約締結交渉をより進めやすくなる場合もあると期待できる。
また、独占的な通常実施権の付与により高いライセンシング料を得ることも選択肢として考えられる。」
●参考情報
・知財取引に関するガイドライン
中小企業庁
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/chizai_guideline.html
ガイドラインでは、
「契約締結前」
「試作品製造・共同開発等」
「製造委託・製造販売・請負販売等」
「特許出願・知財権の無償譲渡・無償許諾」
の観点があります。
契約書のひな形もあります。
具体的には、
秘密保持契約書、共同開発契約書、
開発委託契約書、製造委託契約書の
ひな形があります。
・知的財産取引検討会報告書
中小企業庁
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/chizaitorihiki/2021/210331chizaitorihiki_report.pdf
知財取引の適正化の話題と、
中小企業による知財の活用の話題が
あります。
契約のひな形もあります。
・中小企業経営者のための技術契約マニュアル
(秘密保持、共同研究、業務委託(受託)、共同出願、実施許諾(ライセンス)、譲渡、オプション、OEM/ODM、技術指導)
東京都中小企業振興公社 東京都知的財産総合センター
https://www.tokyo-kosha.or.jp/chizai/manual/gijutsukeiyaku/
・公正取引委員会
https://www.jftc.go.jp/index.html
あります。
特に、
企業間で力関係に偏りがあるときに
参考になります。
・優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方
平成22年11月30日 公正取引委員会
https://www.jftc.go.jp/hourei_files/yuuetsutekichii.pdf
参考になります。
・知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針
平成28年1月21日改正 公正取引委員会
https://www.jftc.go.jp/dk/guideline/unyoukijun/chitekizaisan_files/chitekizaisangl.pdf
特許法等や著作権法との関係について
示されています。
特に、
権利行使が行われる際に、
その行為が独占禁止法違反にならないか
確認する際に、参照します。
・スタートアップとの事業提携に関する指針
(秘密保持契約・共同研究契約・ライセンス契約・契約全般)
令和3年3月29日 公正取引委員会
https://www.jftc.go.jp/dk/guideline/unyoukijun/startup.html
https://www.jftc.go.jp/dk/guideline/unyoukijun/startup/startup.pdf
・共同研究開発に関する独占禁止法上の指針
平成29年6月16日改定 公正取引委員会
https://www.jftc.go.jp/dk/guideline/unyoukijun/kyodokenkyu.html
・不正競争防止法
経済産業省
https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/index.html
・営業秘密〜営業秘密を守り活用する〜
経済産業省
https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/trade-secret.html
・営業秘密管理指針
平成15年1月30日 最終改訂平成31年1月23日 経済産業省
https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/guideline/h31ts.pdf
・秘密情報の保護ハンドブック 企業価値向上に向けて
平成28年2月 経済産業省
https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/handbook/full.pdf
・【参考資料1-6】秘密情報の保護ハンドブック 〜企業価値向上にむけて〜
https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/handbook/reference1-6.pdf
・各種契約書等の参考例
(情報管理規定、秘密保持契約、製造請負契約、業務委託契約、共同研究開発契約)
経済産業省
https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/handbook/reference2.pdf
https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/word/reference-2_word.docx
・秘密情報の保護ハンドブックのてびき
経済産業省
https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/170607_hbtebiki.pdf
・下請代金支払遅延等防止法ガイドブック
知って守って下請法 〜豊富な事例で実務に役立つ〜
公正取引委員会・中小企業庁
https://www.jftc.go.jp/houdou/panfu_files/shittemamotte.pdf
参考になります。
・技術移転とライセンシング
2011年 特許庁 (社)発明協会アジア太平洋工業所有権センター
特許権譲渡契約書・特許ライセンス契約書・ノウハウライセンス契約書・秘密保持契約書・オプション契約書の文例があります。
・ASEANに関する知的財産に関する情報
日本貿易振興機構(JETRO)
https://www.jetro.go.jp/world/asia/asean/ip.html
タイ・ベトナム・インドネシアの技術ライセンス契約・共同研究開発契約・職務発明契約のひな形があります。
・中小企業支援知的財産経営プランニングブック
平成23年3月 特許庁
https://www.jpo.go.jp/resources/report/chiiki-chusho/chizai_planning.html
https://www.jpo.go.jp/resources/report/chiiki-chusho/document/chizai_planning/all.pdf
中小企業に対して
知的財産戦略を含む支援を行う一連の流れが
示されています。
しかしながら、
企業内で自ら経営課題を検討する際にも
この資料が提示する手法は参考になります。
p.46
「ライセンス等の契約締結において、十分に理解しないままに自社に不利な条件を飲まされてしまうことを回避するためには、相手方が提示した書式をそのまま用いるのではなく、自社が希望する標準的な条件を盛り込んだひな形を用意しておくことが望ましい。」
●相談先
・公正取引委員会
相談・届出・申告の窓口
https://www.jftc.go.jp/soudan/madoguchi/index.html
独禁法・下請法に関する相談はこちら。
・弁護士知財ネット
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