経営手がかりシート・3101
(令和3年(2021年)9月版)
3101営業秘密管理(ノウハウ秘匿)
●テーマ名(詳細版)
営業秘密管理(ノウハウ以外も含む)
ノウハウ秘匿管理
秘密保持のためのシステム構築
ライセンシングとともに、ノウハウを開示する場合における秘密保持
退職者による技術・ノウハウ流出防止
自社の情報の開示・不開示の制御
ノウハウの技術化・マニュアル作成
技術・ノウハウの承継
<<テーマの説明音声データ>>
●テーマの説明
このテーマは、営業秘密(技術的なノウハウも含む)の管理を行うことに関するものです。自社の経営戦略において、対外的に公開しないと定めたものは秘密が保持されるように適切に管理する必要があります。また、不正競争防止法において営業秘密として保護されるためには、秘密管理性・有用性・非公知性の三要件を満たすことが必要とされており、やはり「秘密管理性」を担保することが重要です。
営業秘密の管理のための規程や体制の整備については、下記の参考情報に示される情報を参考にするとよいでしょう。また、下記の相談先に相談することも可能です。(なお、下記の参考情報のひとつには、スタートアップのベンチャー企業のケースでは、営業秘密管理規程の早期の導入が、社員間の信頼関係に与える影響を考慮すべき場合がある旨の指摘があります。このあたりは、ケースバイケースな面もありそうです。)
営業秘密の取り扱いでは、以下のような、様々なケースの検討が必要になることがありえます。
・ライセンス付与に伴うノウハウ開示
自社と他社の間で特許権等の実施権(ライセンス)の付与が行われる場合には、それに伴い、秘匿されていたノウハウの開示もありえます。その場合に、そのノウハウの取り扱いを適切に行うことが必要となります。企業間の提携中に、第三者にノウハウが漏洩することがあれば、致命的な信用問題となりかねません。
・退職者による営業秘密の流出防止
退職者が営業秘密を持ち出さないように、事前に対策を行うことが望ましいです。例えば、就業時に守秘義務についての契約をすることや、営業秘密を持ち出せないシステム構築を検討することが挙げられます。
・対外的な情報開示の制御
他社と関わる際や、対外的な広報を行う際において、自社の情報のうち、どの時期に誰にどの情報まで開示してよいのかを明確にしておくことが望ましいです。そうでないと、意図しない秘密漏洩が起こる可能性があります。大企業との交渉時や、情報提供を要求された時や、工場見学等を要求された時には、特に注意が必要です。
・ノウハウの技術化・マニュアル作成
自社のノウハウ・技能が属人的なものである場合、そのノウハウ・技能を、自社のものとして確実に定着させる対策をとることが望ましいです。例えば、ノウハウ・技能を、より客観的に表現できるようにし明文化する「技術化」・「マニュアル作成」を検討することになるでしょう。
・ノウハウの承継
ノウハウ・技能の承継も重要な課題です。ノウハウ・技能の承継は、上記の「技術化」や「マニュアル作成」で対応できる部分と、人から人に地道に承継させる手順を踏む部分がありえます。ノウハウ・技能を有する従業員等が退職する際に慌てることにならないように、事前準備が重要です。
●参考テーマ
・3126…先使用権確保のための証拠保全
秘匿する対象(例えば、技術・ノウハウ)を、他社が独自に開発して特許出願に至る危険性がある場合。
・4116…他社との契約における注意点
他社と秘密保持契約を行う場合。
●事例
・ココがポイント! 知財戦略コンサルティング 〜中小企業経営に役立つ10の視点〜
2009年3月 特許庁
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1247689
pp.93-99
鍋屋バイテック株式会社
「製造装置を自社で開発・内製している。」
・中小・ベンチャー企業知的財産戦略マニュアル2006
中小機構
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1247703
pp. 26-27, 128-137
ふくはうちテクノロジー株式会社
地域中小企業知的財産戦略支援事業におけるモデル支援事業(2004年度(平成16年度))。
「知的財産戦略の策定を実効性のあるものとして自社内に定着させるために、営業秘密管理体制の整備(各種規定・マニュアル策定等)を行った。
規程やマニュアルの策定、運用、監査まで行うもの。
他社から持ち込まれる営業秘密の取り扱いも厳密に規制しているので、大企業側にとっても技術提携先としての安心感を得られると考えられる。」
・中小・ベンチャー企業知的財産戦略マニュアル2006
中小機構
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1247703
pp.28-29, 73-83
株式会社オプナス
地域中小企業知的財産戦略支援事業におけるモデル支援事業(2005年度(平成17年度))。
「「営業秘密管理規程の策定」「情報管理マニュアルの策定」を行った。」
・中小・ベンチャー企業知的財産戦略マニュアル2006
中小機構
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1247703
pp.107-113
大丸産業株式会社
地域中小企業知的財産戦略支援事業におけるモデル支援事業(2004年度(平成16年度))。
「大企業から知財(特許・製造ノウハウ等)・人材・商標などを譲り受けて事業を行っている。
自社が有するノウハウを強く認識したことを踏まえて、ノウハウ管理規程を作成した。」
・中小企業支援知的財産経営プランニングブック
平成23年3月 特許庁
https://www.jpo.go.jp/resources/report/chiiki-chusho/chizai_planning.html
https://www.jpo.go.jp/resources/report/chiiki-chusho/document/chizai_planning/all.pdf
p.72
テフコ青森株式会社
「本社で一括して製造することで、品質の管理を行い、製造ノウハウの散逸を防いでいる。」
●参考情報
・営業秘密・知財戦略相談窓口
工業所有権情報・研修館(INPIT)
https://faq.inpit.go.jp/tradesecret/service/
・中小企業経営者のためのノウハウの戦略的管理マニュアル
不正競争防止法による営業秘密の保護 及び 先使用権制度の活用について
東京都中小企業振興公社 東京都知的財産総合センター
https://www.tokyo-kosha.or.jp/chizai/manual/knowhow/knowhow_all.pdf
・不正競争防止法
経済産業省
https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/index.html
・営業秘密 〜営業秘密を守り活用する〜
経済産業省
https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/trade-secret.html
・営業秘密管理指針
平成15年1月30日 最終改訂平成31年1月23日
経済産業省
https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/guideline/h31ts.pdf
・秘密情報の保護ハンドブック 企業価値向上に向けて
平成28年2月
経済産業省
https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/handbook/full.pdf
・【参考資料1-6】秘密情報の保護ハンドブック
〜企業価値向上にむけて〜
https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/handbook/reference1-6.pdf
・各種契約書等の参考例
(情報管理規定、秘密保持契約、製造請負契約、業務委託契約、共同研究開発契約)
経済産業省
https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/handbook/reference2.pdf
https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/word/reference-2_word.docx
・秘密情報の保護ハンドブックのてびき
経済産業省
https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/170607_hbtebiki.pdf
・「営業秘密」を管理して会社を守り、強くしよう!
経済産業省 協力:(独)中小企業基盤整備機構
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/sonota/eigyou_himitu.pdf
・高橋政治,「ノウハウ秘匿と特許出願の選択基準およびノウハウ管理法」,現代産業選書
・野中帝二,安部純一(富士通総研),”組織における知の継承 知の継承における五つの誤解”,tokugikon,no.268, 2013.01.28
http://www.tokugikon.jp/gikonshi/268/268tokusyu2-3.pdf
・野中帝二,安部純一,白石一洋,”技術・技能伝承への取組み”,FRIコンサルティング最前線,Vol.1, pp.138-143, 2008
https://www.fujitsu.com/downloads/JP/archive/imgjp/group/fri/service/case/BA_3.pdf
・中小企業支援知的財産経営プランニングブック
平成23年3月 特許庁
https://www.jpo.go.jp/resources/report/chiiki-chusho/chizai_planning.html
https://www.jpo.go.jp/resources/report/chiiki-chusho/document/chizai_planning/all.pdf
中小企業に対して
知的財産戦略を含む支援を行う一連の流れが
示されています。
しかしながら、
企業内で自ら経営課題を検討する際にも
この資料が提示する手法は参考になります。
p.45
「スタートアップのベンチャー企業のように、営業秘密管理規程を守ることを重視するより、社員間の信頼関係を重視することを優先すべき時期もあり、営業秘密管理規程の導入のタイミングには留意が必要である。」
●相談先
・営業秘密・知財戦略相談窓口
工業所有権情報・研修館(INPIT)
https://faq.inpit.go.jp/tradesecret/service/
https://www.inpit.go.jp/katsuyo/tradesecret/madoguchi.html
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