経営手がかりシート・1641
(令和3年(2021年)9月版)
1641職務発明規程の整備
●テーマ名(詳細版)
職務発明規程の整備
●テーマの説明
このテーマは、特許法第35条に定められる「契約、勤務規則その他の定め」により、主に「職務発明について使用者等に特許を受ける権利を取得させ」るとともに、従業員が受ける権利を有することになる「相当の利益」についての定めを行うこと(職務発明規程を整備すること)に関するものです。
職務発明は、特許法上、「その性質上当該使用者等の業務範囲に属し、かつ、その発明をするに至った行為がその使用者等における従業者等の現在又は過去の職務に属する発明」と定義されます。
自社の従業員が行った発明について特許出願を行う場合、または行う可能性がある場合は、職務発明規程を設けておくことが重要です。特に、自社の従業員の発明について特許を受ける権利を会社側(使用者等)に取得させる代わりに、従業員が受ける権利を有することになる「相当の利益」についての定めを行うことが重要です。この定めがないか、定めの内容が不合理である場合には、特許法第35条第7項が適用されることになります。特許法第35条第7項が適用される場合に、裁判上で「相当の利益」の金額がどのように認定されるのかは予測困難な面があり、会社としてリスクを負うことになります。
職務発明規程の範疇を超えて、広く、自社において行われる知的財産活動に対する、従業員への報奨制度の在り方を検討することも重要です。経営戦略における、知的財産活動の位置付け・期待する効果(何を効果と捉えるのか)を踏まえて、報奨制度を定めるとよいでしょう。
下記の事例には、報奨制度の在り方のいくつかの例が示されています。
上記の様々な取り決めを踏まえて、取り決めが実際に機能するように、組織体制・業務フロー・書式のそれぞれを整備することも、検討することになります。各種の整備の実際については、参考情報として挙げられている、公的機関から提供されている情報が参考になります。
●参考テーマ
・5621…体制作り
職務発明規定や報奨制度を定めることに伴い、自社の組織体制・業務フロー・書式のそれぞれを整備する場合。
●事例
・ココがポイント! 知財戦略コンサルティング 〜中小企業経営に役立つ10の視点〜
2009年3月 特許庁
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1247689
pp.12-22
株式会社ニッコー
「開発・特許出願に至るプロセスで貢献した社員には、特許取得の有無にかかわらず一定の報奨金を出している。」
・ココがポイント! 知財戦略コンサルティング 〜中小企業経営に役立つ10の視点〜
2009年3月 特許庁
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1247689
pp.41-49
株式会社エルム
「特許を取ったというだけでなく、その成果が売上につながってはじめて発明者に還元される仕組みにしている。特許の報奨金は売上の1%。
ノウハウとして秘匿管理する場合には、賞与などで配慮。」
・中小・ベンチャー企業知的財産戦略マニュアル2006
中小機構
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1247703
pp.107-113
大丸産業株式会社
地域中小企業知的財産戦略支援事業におけるモデル支援事業(2004年度(平成16年度))。
「大企業から知財(特許・製造ノウハウ等)・人材・商標などを譲り受けて事業を行っている。
社内の開発者から、次世代の技術者のためにも、発明を促進する一環として、職務発明規程の見直しをするべきとの意見があり、社長も支持した。弁理士からは、従業員が対価について自由に述べる機会が必要であり、その記録を残すことが大事であるなどの説明があった。以上を踏まえて、職務発明規程を作成することになった。」
●参考情報
・職務発明制度について
特許庁
https://www.jpo.go.jp/system/patent/shutugan/shokumu/index.html
・中小企業等の皆様へ 〜職務発明規程の導入〜
特許庁
https://www.jpo.go.jp/system/patent/shutugan/shokumu/shokumu_cyusyou.html
・中小企業経営者のための職務発明制度改正対応の手引
2016年9月 東京都中小企業振興公社 東京都知的財産総合センター
https://www.tokyo-kosha.or.jp/chizai/manual/shokumu/rmepal0000020rdc-att/shokumu_zentai.pdf
・ASEANに関する知的財産に関する情報
日本貿易振興機構(JETRO)
https://www.jetro.go.jp/world/asia/asean/ip.html
タイ・ベトナム・インドネシアの技術ライセンス契約・共同研究開発契約・職務発明契約のひな形がある。
・中小企業支援知的財産経営プランニングブック
平成23年3月 特許庁
https://www.jpo.go.jp/resources/report/chiiki-chusho/chizai_planning.html
https://www.jpo.go.jp/resources/report/chiiki-chusho/document/chizai_planning/all.pdf
中小企業に対して
知的財産戦略を含む支援を行う一連の流れが
示されています。
しかしながら、
企業内で自ら経営課題を検討する際にも
この資料が提示する手法は参考になります。
p.44
「発明者の人数が多い企業や技術者の入れ替わりが多い企業では、権利の帰属や対価の問題などが顕在化するリスクが高くなりやすい。職務発明規程を設けていない場合は留意が必要である。」
p.45
「ノウハウを差異化要因とする企業(例えば、受託生産型の企業、サービス系の企業)では、職務発明規程に基づく報奨制度は社員のやる気を引き出すのに不十分であるおそれがある。こうした企業のなかには独自のアイデア提案制度を持っている企業がある。」
●相談先
・知財総合支援窓口
工業所有権情報・研修館(INPIT)
https://chizai-portal.inpit.go.jp/
↑は、
このページ(手がかりシート)の
趣旨と使い方をご説明したものです。
↑は、
このサイトのコンテンツの趣旨を
ご説明したものです。
↑は、
このサイトのコンテンツの制作者の
バックグラウンドを示すものです。
●ご感想について
ご感想などのメールは、
<info (アットマーク) hyperpatent.sakura.ne.jp>まで。
((アットマーク)は@に置き換えてください。)
または、↓のgoogle formsにて、
ご感想を送信いただけます。
※令和4年2月12日改訂
※令和4年2月10日改訂
※令和4年1月25日改訂
※令和3年9月16日改訂
※令和3年9月12日改訂
※令和3年9月11日改訂
※令和3年9月10日改訂
※令和3年9月8日改訂
※令和3年9月5日新設